Bonsoir! 川古です。
これから声優を目指す方、既に目指されている方はどのように声優への道筋をたどっているでしょうか。
恐らくほとんどの方が専門学校もしくは養成所へ通う選択をしていると思います。
僕は元々俳優志望で、その道の養成所と学生の演劇をしていましたので、専門学校には通っていません。
そのため声優への道としての第一歩としては、声優養成所からになります。
今回は養成所の経験を通して感じたこと、事実をふまえ、養成所に通う上での注意点をまとめてみました。
お前に言われなくても解ってるよ。えらそうに!
すみません、そういう方もいるでしょう。
ただ演技や実生活ふくめ、頭で解っているのに出来ないこと、思うようにいかないことというのは非常に多いです。
そもそも、出来ていたら習う必要もないです。
なので、既に意識して結果も出せているという人は本記事の価値は無いと思いますので、そっとじしてください。
養成機関もとい業界は競争ですので、他者より一歩前へ出る必要が出てきます。
ただの凡骨で終わらないために…
また声優への認識を深める以下の記事もありますので、よろしければ合わせて是非ご参考ください。
先に一つの結論を言いますと「養成所=チャンスを得るところ」です。
何故養成所に通うのか
専門学校、養成所に通う理由としては以下だと考えます。
- 特定の事務所に所属するため
- 解りやすさと同調圧力
- 期間や時間
- スキルアップ、鍛錬のため
1.特定の事務所に所属するため
理由としてほぼ100%含まれるのがこれじゃないかと思います。
結論、事務所所属のチャンス・切符を得るための入学および入所。
声優の活動をするためには足がかりが必要です。
そのため、まずは大手の事務所に入ってスタートしたいと考えるのは普通のことです。
専門学校は少し異なりますが、養成所については殆どが事務所付属であり、言い換えれば「事務所・プロダクションに入るための施設」です。
(※専門学校については、養成所の前段階だったり、優秀な人はそのまま事務所預かりになったりするケースもあると思います)
なので前提として「入りたい事務所を決める⇒対象の事務所の養成所に入る」といった目標設定をした上で、養成所に通っているはずです。
個々の事務所や養成所を選択する理由としては「〇〇さんが所属しているから」「有名だから」「やりたいジャンルの仕事に強そうだから」etc…
色々あると思いますが、ぶっちゃけ何だっていいです。
また、所属者を参考に選択することは事務所の規模や営業力を判断するために大きな意味を持ちますので、妥当な方法と言えます。
いずれにしても、数ある養成機関から選択して通うわけですから、どなたでも納得の理由でしょう。
2.解りやすさと同調圧力
上記に関連して、では何故事務所に所属する方法として、専門学校と養成所を選択する人が多いのでしょうか。
それは、一番解りやすい形で示された道だからです。
勿論、運営側も門戸を開いて所属へのPRをしており、基本的にはその養成機関に入らなければ所属は困難といった事務所は多いでしょう。
ただ前提として、儲かるビジネスとして成立しているから存在しているものです。
(事実として入所するにもオーディション料をとるところが殆どです)
つまり、それだけ選択する人が多いという証左でもあります。
・声優になるためには行く必要がある
・みんなそうしているから最も確実
・養成所以外の選択肢がない
こうした理由は、正しい、間違っているといった話ではありませんが、ある種の思考停止の側面があることは否めません。
何故なら養成所を経由しないでも声優になって活躍されている方はおり、なるための方法や所属する方法は一つではないからです。
僕もその轍を辿った一人ですので大きいことは言えませんが、とりあえずそうするべきだからそうする、といった人は非常に多いんではないでしょうか。
これは学校を卒業したら、とりあえず複数企業の募集中求人に応募する、といった所謂一般的な就職活動の当たり前の感性と同じだと思います。
3.期間や時間
これは理由というより条件の話になりますが、上述の入りたい事務所と同じくらい、時間や在籍期間を重要視される方は多いと思います。
それは声優になるためのルートの指標になるからです。
あまり類はないですが、例えば青二プロダクション付属の青二塾は、ほぼ全日制で通う条件が厳しめです。
対して、仕事と両立しやすい週一回のアーツビジョン等系列事務所付属の日本ナレーション演技研究所といったところもあります。
人により「第一希望だけど、時間が遅いからここは通えないな…」「二年間は長いから一年制のところに行きたい」といった様々な都合、事情もあるでしょう。
なるべく近道をしたいと考えるのが人の心理ですから、在籍期間と密度のバランスを考慮して養成機関へ行くという選択は、最重要事項といってもいいかもしれません。
4.スキルアップと鍛錬のため
専門学校や養成所は、その名のとおり養成する機関ではありますが、この点は曖昧さを感じます。
というのも、カリキュラムの内容第一で選択する人はあまりいないと思われるからです。
「ナレーションをやりたいからナレーションの講義が多いここにしよう」という、スキルアップの内容を第一に考える人はあまりいないんじゃないかなあ、と。
また、後述しますが、養成所は学習することが第一ではないという点からも、スキルアップは二の次になりがちです。
スキルアップを第一に考えている人からすれば遺憾かもしれませんが、割合としては少ないというのが僕の感想です。
養成所で心がけること
専門学校、養成所は通常の学校とは違います。
決められた期間内でどう過ごすか、アプローチできるかが大切です。
成果を見せる場所
当たり前ですが、養成所には主として実践形式、中には講義も含めたレッスンがあります。
それらについて意識すべきなのは「授業は練習ではなく成果を見せる場所」ということです。
このフレーズについては、真剣に学ぶ人ならひょっとしたら何処かで聞いたことがあると思います。
ただ同時に、多くの人が勘違いもしくは出来ていないことでもあります。
レッスン自体は学びの場所であることは間違いないのですが、特に養成所では日数や時間が限られています。
更にマンツーマンではなく、同じクラスに在籍する人が十数人単位でいることが殆どです。
そうした環境の中で、恐らく時間も二時間程度とすると、一回のレッスンで自分の演技や実践をさせてもらえるのは、せいぜい二回程度でしょう。
これで一体どれだけのスキルや知識を吸収出来るでしょうか。
天才であれば話は別ですが、大抵の人はインプットすら満足に出来ず終わるでしょう。
そして次回、また次回、とあまり中身の無い時間を過ごすパターンになります。
こうした人の特徴は「養成所だけで学べばいいと思っている」「養成所に通っていること自体に満足してしまっている」ことです。
断言しますが、これ本当の意味で意識出来ている人って、クラスで一人いるかいないかくらいだと思います。
なので差をつけたいなら、養成所は学ぶ場所ではなく「これだけ身に付いているので評価してください」という発表の場所と捉えるべきです。
人によっては既に耳にタコが出来るくらい聞いているかもしれませんが、耳タコになって然るべき内容ですね。
期間全てが試験みたいなもの
学校のテスト前だけ勉強頑張る、みたいな風潮ありますよね。
普通の学校であれば、そもそも試験期間とかありますし、それでなんとかなってしまったりするのですが、養成所はそういうわけにはいきません。
(まあ普段からちゃんと勉強しておけば学校の試験も楽ですけどね…)
レッスン一回一回が個々の評価に直結します。
専門学校や養成所は言ってみれば「事務所の商品として価値のあるものかどうか」を品定めする期間であり機関です。
声優の商品としての第一要件が演技や表現力であることは言うまでもありませんが、人間性や日頃の行いが評価に繋がる場合もあるでしょう。
これは実際に聞いたことがないので評価に直結しているかは解りませんが、早めに稽古場に来て掃除やイス並べをしている人いたりしませんか?
そこまでする必要はないと思いますが、少なからず悪い印象は受けませんよね。
そんなのただのポイント稼ぎでしょ?誰も見てないよ
と思う方もいるでしょうし、そうかもしれませんね。
ただまあ、ポイント稼ぎというと聞こえは悪いですが、気にするべきなのはそこではありません。
気にするべきは「他者の目にどう映るか」です。
なので、最低限のこととして、例えばですが
- きちんと講師に挨拶にうかがう
- 身なりに清潔感を保つ
- 遅刻は絶対しない(なるべく欠席もしない)
こういったことはしっかりしておくべきでしょう。
自分が商品として見られた時に、売れるかどうか客観視することは難しいことではないと思います。
なので、現在専門学校・養成所に通っている方は、演技の評価という視野に囚われず、あらゆる点で常に品定めされている意識を持ってみてください。
そして勿論、都度レッスンでは成長や伸びしろを見られます。
成長性:C、みたいな(ジョジョの奇妙な冒険を知らない方はすみません)
積み重ねたものは嘘をつきません。
最後に試験的な課題やテストがあると思いますが、そこでなんとかなるという考えは絶対に捨ててください。
自己プロモーションを考える
演技以外のあらゆる点で評価はされているということについて書きました。
関連して、そんな中どうアプローチしていくか悩みませんか?
または明確にやりたい方向性自体は定まっている人もいるかもしれません。
例えば自分は二枚目のキャラクターをやりたい、アイドルの天然キャラで売ってほしい等。
無理なく自分が活かせるものが一番だと思いますが「やりたいことと向いていることは別」であることは知っておくべきでしょう。
辛辣なことですが、向き不向き・得手不得手が一致していないというのは、多分にしてあります。
更に言えば、事務所は沢山の人を扱う中でカテゴリー分けをするため、希望する枠の中にあなたが含まれているとは限りません。
僕も聞かされたことがあるのですが「カレーの具の例え」で言うなら
- 自分は肉になりたいけれど、実はじゃがいもとして見られていた
- 辛口ルーだと思っていたのに、甘口の方が口に合った
- そもそも鍋にすら入れていなかった
といった感じでしょうか。
とはいえ、この段階であれこれ考えるのは尚早かもしれませんが…
もし事務所に所属することになったら選択云々の問題でも無くなる可能性もあります。
なので、あくまで脳内で、アプローチ出来る段階であれば考えてみるのもありかな、と。
それと、個性について補足になるのですが、よく「手のかかる子ほど可愛い」って言いますよね。
これは一概には言えないのですが、講師からみた教え子に対する評価にも結構当てはまるようなんです(少なくとも僕は複数の恩師から聞かされています)
可愛いというと語弊があるので言い換えると「印象に残る」ということです。
養成機関では沢山の生徒がいるので、講師はそれぞれを記憶するのが大変です。
例えば以下の二者がいたとして、どちらが講師の記憶に残りやすいでしょうか。
A.何でもそれなりにそつなくこなす良い人
B.あまり上手ではないがユーモアのある人
これは多分、Bなんです。
仕事でもそうですが、見る側からすると同じような枠組みの中の大勢というのは「どんぐりの背比べ」なので、多少の違いは大した評価の差になりません。
そんな環境の中なので、問題児や変わった人の方が印象に残りやすい…
勿論、悪いことをしろとか無理して意識しろという話ではないです!(※嫌われるor人間的に問題があると判断されるのは論外です)
個性は十人十色人それぞれですし、意識してどうにかなるという話でもないですが、ただ共通認識として影響はありそうなので、頭の片隅に入れておいてもいいかもしれません。
あとこれに関して、ちょっとした小話なんですが、昔、公営の体育館にトレーニングをしにいった時のことです。
たまたま中一の頃に担任だった体育教師を見かけたので、挨拶をしたところ、僕のことを全然覚えていなかったんです。
「そうですか。〇〇(当時イキってた不良の生徒)とか、やんちゃな奴は覚えているんですけどねえ」
とかなんとか。
僕自身はそんな悪いこともしていなかったですし、割と普通の生徒だったのであまり記憶に残らなかったのでしょう。
(いかにも体育教師の「お前らぁ!!」みたいな雰囲気の先生でしたが、地味に敬語だったのもちょっと悲しい…)
毎年生徒が入れ替わるから無理もないとはいえ、「手のかかる子ほど可愛い」裏付けとなるような、ぷちショックエピソードでしたね。
評価する人について
いくら技術が進歩したとはいえ、シンギュラリティにはまだ至っておらず。
スタジオや校内・所内に監視カメラでも仕掛けられていてAIが勝手に個人の能力を判断…といったことは、少なくとも現時点ではないでしょう。
そうなると「誰が評価をしているか」という点も気になりますよね。
また、前述のように評価されている意識は常に持っておいた方がいいのですが、誰にアプローチするのが効果的か、といったところもあります。
専門学校は心得がないので伝聞になりますが、割と解りやすく講師とオーディションの審査員(事務所のマネージャー等)になると思われます。
養成所の場合は事務所が直接関わってくるため、少し環境によって変化する面があるでしょう。
基本的には、会社は社長の持ち物ですので、社長に気に入られるのが最重要なのは間違いありません。
その上で、眼前で意識すべきは当然講師になります。
そしてマネージャーが参観する機会というのもあると思いますので、そういった場合はとりわけチャンスです。
これは場所によりけりですが、僕の経験を基にアドバイスしたいと思います。
講師に関しては、複数の方から教わるケースが多いと思います。
そこで「この人は合わないなぁ」「苦手だなぁ」と感じることがあるかもしれません。
ただその中でも、裁量を任されている評価の比重が大きい講師が事実存在します。
この人が采配を握っている、というやつです。
そのため、特定の講師を苦手だと感じた場合もなんとか堪えましょう。
この先声優として続けていく場合には、必ず合わない人や嫌だなと思う人と仕事をしなければならないことがあるはずです。
なので、もし理不尽だと思うことがあっても、試練だと捉えて頑張ってください。
これは他でもない僕自身が痛い目を見ているので…反面教師として伝えたいです(苦笑)
とはいえ、どう感じるかというのは個人の問題として避けられないので、精神的にどうしようもない場合もあると思いますが…
もし思い当たる場合は、一度先を見据えて、よく考えてみてください。
そしてマネージャーですが、これはかなり大きいです。
マネージャーさんは売り込みをしてくださる方なので、先を見据えるという意味では、事務所という組織そのものを意識するより重要かもしれません。
ダイレクトに成果に直結してきます。
養成所の同期で、上には進めなかったのですが、当時マネージャーだった方に気に入られて別の事務所に所属した方がいました(現在はそこからさらに移籍していますが、結構有名になっているようです)
このようなことが、1ケースとして実在します。
環境によって多少違いはあると思いますが、心がける部分はどこでも一緒かなと思いますので、よろしければ参考にしてみてください。
入り口に立つために
声優の専門学校や養成所では、車の教習所のように、やりきれば明確な資格や証明書を貰えるということはありません。
貰えるかもしれないのは、事務所所属という名の声優を続けられるかもしれないチャンスという切符です。
そしてそれも、貰える保証は一切ありません。
仮に貰えたとしても、それは一つの入り口であって、やはり声優の活動を保証するものではありません。
何てことだ!と思いますよ、いや本当に。
こんなマシュマロを超えるフワフワ感は声優をおいて他にあるだろうか、いや無いに違いない。
因みに本記事作成時、世界情勢で大きな話題になっているロシアの演劇学校では、国として就職を保証する制度があると大学時代に聞いたことがあります。
声優というのは日本特有の文化みたいなところがあるので、日本も何かしらあればいいんですけどね…
もしくは、個人的に将棋界のように年齢制限や資格を設けた方がいいと思っていたりします。
いずれにしても、入り口に立てるかどうかというのは、雲泥の差があります。
決して安くない金額を支払って通うわけですから、何としても結果を出したいのは当然ですよね。
繰り返しになりますが、養成機関に通う生徒は基本的に「どんぐりの背比べ」です。
ちょっとした意識で差をつけたり、結果に繋がることもありますので、現在進行形の方は改めて見直してみるものいいかもしれませんね。
そんなわけで。
Bonne soirée! ここまで読んでいただき、ありがとうございました。