Bonsoir! 川古です。
発声と滑舌と聞いて、馴染みのある人もそうでない人もいると思います。
声優や声に携わることにおいて、これらは基礎として必要不可欠です。
今回は主に発声滑舌をこれから勉強しようと思う方、また、これまであまり意識してこなかった方に向けてまとめていきます。
本記事を読むことで、基本となる入口に加え、以下の内容について知識が深まります。
- 声に関わる仕事に必須
- 思った以上に出来ていない
- 本当の意味でイイ声になる
声優やナレーターに限らず、日常生活やその他のビジネスでも活きてきますので、是非ご参考いただけると幸いです。
発声と滑舌
発声と滑舌と聞くと「大きな声を出す」「滑らかに喋る」といった印象を思い浮かべるかもしれません。
その解釈で相違ないと思います。
しかし僕は、表現を成立させるための重要なスキルとして捉えています。
喋ることは人間の生活には当たり前のことで、もはや生理現象みたいなもので、普通はあえて話すようなことではないと感じるでしょう。
ただ、声に携わる仕事等を成立させる上では、基本的且つ非常に重要なことなんです。
発声について
人間は声帯を振動させることで発声をしています。
この時に口腔内や喉を変形させたり活用することで、音は変化します。
七色の声を持つことで有名な声優・山寺宏一さんは、このあたりのテクニックが尋常じゃないですよね!
この声帯ですが、傷つくと声が出なくなります。
個人的な話ですが、とある理由で僕も声が出なくなったことがあります。
それまでは
そんなことあるん!?気合でなんとかなるやろ
くらいに思っていたのですが……マジで出ませんでした。
なので、原因は様々あると思いますが…なるべく喉は大切にしてください。
呼吸法
本題ですが、発声を行う際には、以下三つの呼吸法があります。割と全てその名の通りです。
1.肩式呼吸=「肩式(けんしき)」は、肩でする呼吸です
2.胸式呼吸=「胸式(きょうしき)」は胸でする呼吸です
3.腹式呼吸=「腹式(ふくしき)」は腹でする呼吸です
はい、そのままです(笑)
ただ、共通する重要なことは「全て呼吸は肺でしている」ということです。
これも当たり前ではあるのですが、肩にも(胸にはありますが)お腹にも肺は基本的に付いていませんよね。
肩式というのは、全力で走った後によくゼーハーゼーハ―肩を揺らして呼吸しているシーンとかがありますが、これのことです。
発声する上で日常的に一番使わない方法だと思いますが、芝居の表現的にはそういうシーンであえて使用するということはあると思います。
胸式は言ってみれば普通の呼吸ですが、肺をプカプカさせてする方法です。
また肩式ほどではありませんが、余裕がなかったり緊張した際に時によくやりがちだと感じます。
腹式は、お腹を拡大~収縮させて行う方法です。
因みに腹式は男性の方が自然にしている方が多いそうです。
(腹式は仰向けに寝てやってみると体感しやすいと思いますので、解りにくい方は是非一度やってみてください)
この中で「腹式」が一番耳馴染みのある言葉なのではないでしょうか。
それもそのはず、発声に最も効率的な呼吸法がこの腹式呼吸だからです。
よく「腹から声を出せ!」とかいわれたりしますよね(実際に言われたかどうかはわかりませんが、何故かよく聞く決まり文句です)
とはいえ、上述のように、呼吸自体は肺が行うもののため、空気が入ることによる拡大収縮はありますが、厳密には腹式呼吸というのはありえません。
どちらかというと、横隔膜による作用のため、全て胸式といってもいいのかもしれません。
ただこの腹式をイメージし、腹筋や背筋、体幹を駆使して発声することで、効率よく力強い発声を行うことができます。
僕もよくやるトレーニング方法を以下に記しておきます(ちゃんとやると結構キツイです)
- 一度の呼吸で腹式を意識して「ス!(発音はしない)」と息を鋭く吐き切る
- 上記を60秒間、1秒毎に連続して行う(可能なら間隔を早めにしたり、複数回行ってもいい)
大切なのは、イメージすることです。
実際、僕がボイストレーニングスクールに通っていた時に教わったのですが、発声の8割くらいはイメージだと聞いて得心しました。
イメージすることは、芝居にしろ発声にしろ大切なことです。
声の響かせ方
声を出すにしても、ただ大きな声を出せばいいということではありません。
スポーツと一緒で、正しい使い方をしなければ、たちまち喉を傷めます。
人間は楽器みたいなもので、基盤として良い音を生成出来ても、外へ効率よく放出させなければいけません。
グランドピアノも屋根(天蓋の部分)を開けることで、より大きく素敵な音色が響いていきますよね。
そのため、一つの方法として「頭蓋」に共鳴させることを意識しています。
この方法であれば喉を傷めにくく、最小限の力で声を響かせられます。
これも聞いたことがある人は多いと思いますが、ハミングを用いて、僕は調律するイメージで慣らしています。
もしよろしければ、口を閉じて「ンーーーーー」と、口腔内で色々と当て方を探ってみてください。
この時以下の点を意識するといい感じです。
- 眉間のあたり、斜め上くらいを意識して声をあてる
- 喉を締めない
どこかで頭蓋骨全体や歯が振動してジリジリジリとくるポイントがあると思います。
おお!共鳴してるな!!といった感覚が掴めればOKです。
また同時に、少量の息で響いている実感があるのではないでしょうか。
主観でも、全然響き方が変わっていることが解るはずです。
上記のテクニックを上手く活用出来れば、少ない呼吸でより力強い声を発することが出来るようになります。
理屈で解説出来ることもありますが、実際に声を出して体感してみると感動しますので、一度実践してみてください。
ただ発声の仕方については、上記もあくまで一例であり、様々で、これが正解というのはないと思っています。
会話や演技で必要なスキルや、歌に必要なものなどでもそれぞれ違いますしね。
また、変な癖になったりすることもあるので注意は必要です。
とはいえ、どんなものにもコツが存在します。
効率的な発声方法を使いこなせれば、日常生活等でもオトクなことはあると思いますので、よろしければ是非意識してみてほしいです。
滑舌について
滑舌については、方法論がどうのというより、純粋に正しく使えるかという話になってきます。
口周りの筋肉、歯並び、正しい舌の使い方等の要素はありますが、元々問題が無ければ気にならない点でもあります。
滑舌の悪さは目立つ
発声とは違い、滑舌は言ってみれば素人でも気づきやすい要素です。
日常生活で喋る際に明確に良し悪しが現れるので、結構意識している方は多いと思います。
発声もそうですが、滑舌の良し悪しで心理的な第一印象や性格の印象も変わってくるので、声の仕事に関わらずとも何気に無視出来ないですよね…
特に「サ行」「ラ行」は一般的に口が回りにくく、苦手な方は多いと思います。
僕も隠さずに言うと、サ行は苦手意識がずっとあります。
役者の滑舌練習として外郎売(ういろううり)は鉄板ですが、もっとポピュラーなものは北原白秋の五十音(あめんぼのうた)も有名ですよね。
外郎はある程度覚える必要がありますが、五十音は見ながらでも問題ないと思うので、よろしければ一度音読を試してみてください。
僕も活用していますが、これらを言うだけでもかなりウォームアップになります。
養成所等に通ったことがある人はほぼやることになる内容だと思いますが、なるほど、流石に教材として使われるだけのことはありますよね。
意識しないと衰える
滑舌はやらないと本当口が回らなくなってくるのを感じるのですが、同時に、やればそれだけ身についてきます。
その際「あ、今この発音の時はこういう口の形をしているんだな」と、正しい舌の使い方や、口の形を意識してみるといいでしょう。
マスターすると、いっこく堂さんのような芸当が出来るようになるかも…?
それはさておき、僕も「サ行」での舌の使い方を長年間違っていたことに、ボイストレーニングに通った際に気付かされました。
(本来、サ行は舌の前歯の裏に置くのが正しいのですが、これを上下間から上側の歯に沿わせて発音していました。これだと英語発音上の「th」の形になってしまいます)
存外当たり前に出来ていると思っていたことが、間違えていることもあるから恐ろしいです。
また、声優においては滑舌は絶対的に必要なスキルです。
誤解を恐れずにいえば、発声も勿論大事ですが、このあたりはマイクや録音の性能の向上、音響技術でなんとかなってしまう部分もあるので、滑舌ほどではないでしょう。
詳しい行ごとの解説は割愛しますが、声に携わる人は、特に気をつけなければなりません。
因みに余談ですが、僕は過去に「絶望的に滑舌が悪いから手術した方がいい」と言われたことがありました。
実際手術はしていないですし、ただの中傷でその人の性格が悪かったという話で終わりなのですが、事実として見返すきっかけにはなりました(勿論、感謝するようなことではないです 笑)
ただ、気になる方は勇気を出して周りの人に聞いてみると発見があるかもしれませんね。
思った以上に出来ていない
繰り返しにになりますが、発声と滑舌は声に関わる仕事においてめちゃくちゃ重要です。
日常生活では別に良くある必要はありませんが、この地盤が無いと声に携わる仕事をするのは困難です。
特に滑舌は、料理人で例えるなら、火が怖くて使えない、ということくらい深刻といってもいいでしょう。
また、同じ役者や表現者としても、俳優や女優とではまた異なります。
何故なら、実際の演技では表情やその他の要素があるので、少しくらい滑舌が曖昧でも成立することもありますが、声優は声で全てを表現しなければならないためです。
そして大事なのがこの発声と滑舌「本人が思った以上に出来ていない」ということです。
普段当たり前のようにナレーションやセリフを聴く機会があると思いますが、実際にやってみると、いかにちゃんと話せていないかが解ると思います。
日常で普通に喋るということでさえ、果たして出来ているかどうか。
勿論それはそういうものであって、逆に味があったりはするのですが、表現の世界となるとまた別です。
また先程音響技術が向上しているという話をしましたが、想像以上に収録した音に表現というのは乗りません。
声の表現というのは、街に立ち並んだ高層ビルと同じで、しっかりとした設計図や技術があった上で成り立っているんです。
ただでさえ奥が深い演技や表現をする際に、基礎となる発声と滑舌を盤石にしておかないと、それ以前の話になってしまいます。
意識しないでも出来てしまっている、くらいの状態が望ましいですね(鬼滅の刃でいう「全集中・常中」みたいな感じでしょうか)
そのためにも、日頃から日常生活で使ってみるのもいい訓練になると思います。
イイ声とは
イイ声ってなんだと思いますか?
特徴的な声、低い声、イケボ、はたまた酒焼けしたハスキーボイス?
どれも一般的には、さもありなんといった感じでしょう。
別に定義もありませんから、どれも正解と言えるかもしれません。
でも、僕は「訓練されて磨かれた声」なんじゃないかと考えます。
上の例がダイヤの原石だとすれば、それらが磨かれればダイヤモンドとして、より一層輝きますよね。
もしかしたら、本記事を見ていたただいている方の中には「イイ声ですよね」って、言われたことがある人もいるかもしれません。
でもそれって、社交辞令として、いかにも用意された感じするじゃないですか(それが中田譲治さんだったり、本当にめちゃくちゃ渋イイ声の場合もありますけど!)
手前みそになってしまい恐縮ですが、過去にこんなエピソードがありました。
一つは、とある会社の面接を受けた時。
条件として不利になると判断し、声優をやっていることは伏せていたのですが、終わった後人事の方に「何かやられています?」と聞かれました。
理由を尋ねると「声に響きがあったので」という答えが返ってきました。
この時、人見知りな部分もあったりで、ハツラツとして感じは出来ていなかったと思うのですが…
それでも染みついたものがあるのか、人事の方には解ったようです。
また、決して「イイ声」とは言っていないところがポイントで、ある種の発見を僕にもたらしました。
(大企業ということもあってか)この人事の方、良く見ているな~と、良い意味でゾッと感心した出来事でもありました。
もう一つは、某放送局のラジオ講座を受けた時。
とある番組形式の実践で、ニュース原稿を読む機会がありまして。
その際、アナウンサー読みのテクニックを用いたところ、講師の方に「なんかよくわからないけど、一番良かった」と言われたことがありました。
具体的な回答ではないけれど、なんかよかった、というのは感じていただけたようです。
このように、声は磨けば光ります。
声の仕事を依頼する人は、何も専門家ばかりとは限りません。
原理は解らずとも、訓練されたものは必ず結果として感じ取れるものになりますので、本当の意味でのイイ声を心がけたいですね!
自分も気づくのが遅かった
まとめです。
・発声と滑舌は大事というより必須!
・人は思った以上にしっかり音が出せていない!
・声も鍛錬すれば光り輝く!
演技や表現については、引き出しや持前のセンスが活きることも多いと思います。
ただ、発声と滑舌は意識しないと身に付かないため、訓練に依るところがより大きいです。
普段からハツラツとしていて、元から自然に鍛えられて出来てしまっているというケースもあるとは思いますが、意外と二の次に考えられがちな気がします。
僕もしっかりと見つめ直すまでは、なんとなくでやっていて、気づくのが遅かった部分もあります。
大体、大きなことに気付くのは失敗や後悔をした後だったりしますよね。
また、今はコロナの影響で体制や仕組みが特殊になっている可能性がありますが、ボイストレーニングスクールに通ってみるのも一考です。
僕が通っていた場所は、マウスプロモーションや81プロデュースに所属する方が講師として在籍している等、表現に重点を置いたところでした。
しかし、声に関係した職業の方ではなくとも、会社のプレゼンでしっかりした喋りを身に付けたいから通う人もいたと聞いています。
場所によって合う合わないはあると思いますが、理解が曖昧な人には価値あるものです。
特に若い方は基礎をしっかりすることで、周りとの差が明確に出ますので、是非スクール等の活用も視野に入れて、再認識してみてはいかがでしょうか。
あと声に惹かれる人って多いそうなので、役得になるかもしれませんしね!
ではでは。
Bonne soirée! ここまで読んでいただき、ありがとうございました。